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【海外情報】良いストーリーを語ることがバズの根幹|3年で800万人登録のショート動画の女王ジェニー・ホヨス

By ゾエ(川添志穂)

ジェニーホヨス

平均再生1,000万回――作り手はまだ20歳。
アメリカのショート動画クリエイター、ジェニー・ホヨスを知っていますか?
彼女は「どうバズらせるか」を逆算し、わずか3年で登録者800万以上増やしたショート動画の女王です。

チェスの元神童という頭脳と、マーケター顔負けのリサーチ&検証。
秒単位でのカット、10歳児でも理解できるフック…
そのすべてが「再現可能なヒットの型」として設計されています。

今回はそんなジェニーのバズ設計術をご紹介します。

ショート動画の天才、ジェニー・ホヨス

ジェニー・ホヨスは、昔からちょっと桁違い。7歳でプロとしてチェスに打ち込み、中学2年を飛び級で卒業。両親が起業家ということもあり、小さい頃からビジネスやお金のことに興味津々だったそうです。

そんな彼女がYouTubeを始めたのは16歳。最初は趣味レベルで、大学で学んでいたファイナンスの知識をもとに、「お金系コンテンツ」を投稿していました。

ターゲットはティーンや若い社会人。たとえば「バイト代の使い道」とか「どうやって節約する?」といった、ちょっと現実的で役に立つ情報がメイン。

それなりに反応もありましたが、あるときジェニーは気づきます。

「なんかみんな、Graham Stephan(人気の金融系YouTuber)の真似してない?」

実際、彼女自身も当初はステファンのスタイルをベンチマークしていて、「投資」「節約」「不動産」といったテーマを取り扱っていました。でもだんだん、「似たようなことをやってる人、多すぎるかも…」と思いはじめました。

そこでジェニーは視野を広げ、いろんなクリエイターのコンテンツを観察。すると、「子ども向けに金融の話をしてる人、誰もいない!」という大きな穴に気づきます。

「子どもでも楽しめるように、お金のことをエンタメっぽく見せられたら?」

ここからジェニーの新しい挑戦が始まります。

彼女が目指したのは、“ただ面白いだけじゃない、ちゃんと学びがある動画”。

よく登場するのは「超節約キャラ」とか「家で秘密基地作ってみた」みたいな、低予算×ひらめきのストーリーです。

たとえば:

このような感じで、「これ、やってみたい!」って思える内容がズラリ。

実際に、視聴者の中心は小中学生です。

「おもしろそう」→「やってみたい」と自然に思わせる導線こそが、今のジェニー・ホヨスのスタイル。エンタメと学びのちょうど真ん中を、彼女は狙っています。

そんな彼女が、たった3年で登録者800万人以上を獲得した理由。

その背景にあるのは、圧倒的なまでの「設計力」だと思います。

開始3秒以内で視聴者の心をつかむ

ショート動画は、一瞬で見てもらえるかスルーされるかが決まります。

ジェニーは「冒頭3秒こそがサムネイルであり、タイトルである」と語っており、ここでスクロールを止められるかどうかが勝負。

彼女が特にこだわっているのは、“子どもがパッと見てわかるビジュアルフック”

音をオフにしていても、画面を一目見ただけで何の動画か分かることが理想です。

たとえば代表作「$1でファストフードを再現する」シリーズでは、自分の顔ではなくファストフードのロゴや価格をドンと中央に配置。

ファストフード店のロゴを中央に配置

ファストフードのロゴや価格をドンと中央に配置

これは「自分の顔よりも、誰もが知っているロゴや店舗のほうが視認性が高く、伝わりやすい」という考えに基づいています。

つまり、一発でテーマが伝わる画面構成こそが、彼女のフック設計の鍵。

情報は中央にまとめ、視覚で瞬時に理解できるよう、ロゴ・商品・価格といった要素を的確に配置しています。

フックは必ず「可読性チェック」をする

readabilityformula

それだけじゃありません。

フックを磨き上げるために、ジェニーは「readabilityformulas.com」というツールを使って、文章の読みやすさを数値でチェックしています。

彼女が目安にしているのは、小学5年生(10歳)以下でも理解できるレベル。これは、MrBeastなどトップYouTuberのショート動画を何千本も見て、スクリプトを書き出し、分析した結果、人気動画の多くがこの水準に収まっていたことに気づいたからだそうです。

彼女は「かつての自分」や、7歳と10歳の姪っ子を意識して動画を制作しています。

特にその姪っ子たちは、最近アメリカに引っ越してきたばかりで、まだ英語が堪能ではありません。

だからこそ、直感的に理解できる表現にこだわり、実際に動画を見せてフィードバックをもらっているそうです。

「もし英語が得意じゃない彼女たちでも楽しめたら、それは本当にいい動画ってことになると思う」

相手がどんな子でも“話しかけられている”と感じられる動画を作る。その意識が、ジェニーのフックをより強くしているのだと思います。

フックを見つけるための裏側

そして「いいフックを見つける」ために、ジェニーがしてきた裏側の努力もすごいんです。

彼女がフック力を鍛えるためにやってきたのは、トップYouTuberの徹底リサーチとトライアンドエラー。人気YouTuber10人のスタイルを徹底的に分析して、それぞれのフックを真似して試してみる。

さらに「この動画を、もしMrBeastが作ったら?この企画をRyan Trahanがやったら?」と仮定して、フックを複数パターンで書き出していく。そんな視点を持つことで、フックの発想力はどんどん広がっていきます。

それらを実際に動画で試し、パフォーマンスを比べて、視聴者の反応が良かったものをベースに、自分のテイストを加えて磨き上げていく。そうして、ジェニーは“自分だけの型”をつくってきました。

「最後まで見たい」と思わせるフォアシャドウ(伏線)仕込み

そしてジェニーは、冒頭のフックと同時にクライマックスの“予告”=フォアシャドウ(伏線)も必ず入れています。目的は、視聴者に「この先どうなるんだろう?」と最後まで見たくなる動機を与えること。

この時、ビジュアルやキャプションがしっかりしていたら音がなくてもOK。むしろ音がなくても伝わるくらいを目指すと言います。

例えば、母の日のプレゼントを$5(700円くらい)で作って渡した時のショート動画。

冒頭のフックで「母が母の日に一度もプレゼントをもらったことがなかったので、今年は私があげることにした」と言いながら母にプレゼントを渡す映像を見せます。これで視聴者は最終的に母にプレゼントが渡されることをフォアシャドウとして予想がつくようになります。

でも予算700円くらいでどんなプレゼント渡すの!?という疑問がまだ残っているので、どんなプレゼントを?どうなるの?と疑問が残るため、視聴者はその先のプロセスと結末を見届けたくなるのです。

視聴者のペースを崩さないテンポ設計

全体を通していうと、ジェニーのショート動画は「フック→フォアシャドウ→スムーズな展開→クライマックス→速いクロージング」という基本フォーマットになっています。

  • フック:Hook(冒頭3秒で視聴者を止める)
  • フォアシャドウ:Foreshadow(最後の展開を匂わせる伏線)
  • 内容:Smooth Progression(中盤はストーリーをスムーズに展開)
  • クライマックス:Climax(注目ポイントや感情のピークを置く)
  • 簡潔エンディング:Quick Ending(視聴者が「なるほど」と思えるクロージング)

ジェニーはこのリズムをベースに、「一貫したテンポ設計こそがリテンションを生む」と繰り返し強調しています。

彼女の「ファストフード店のドライブスルーでハンバーガーを頼むのと、自分で作るのと、どちらが早いか?」の動画もこの流れになっています。ぜひ意識して見てみてください。

バズ動画には良いストーリーが必須

もう一つジェニーが動画で大事にしているのが、ストーリー。出来事を単におもしろおかしく並べるんじゃなくて、因果と選択の流れをつくり視聴者をグッと引き込んでいきます。彼女自ら、いくつかのストーリーテリングの“型”を解説してくれているので、ご紹介しますね。

まず、良いストーリーの要素は3つだというジェニー。「冒頭(始まり)」「問題(コンフリクト)」「ゴール」。シンプルなストーリーテリングの王道構成ですね。これの流れを入れることはもちろん、この3つをどうつなぐかというところが大事。

(1)始まりとゴールを何度もBut-soで繋ぎ、コンフリクトを乗り越えていく

比較的初心者でも真似しやすくておすすめな工夫としてジェニーが紹介していたテクニックが「ストーリー+転換(But-So構造)」を徹底して組み込む方法。

物語に変化(But)と因果(So)を入れ続け、観客を引き込み続け、ストーリーには必ず「予想外の転換」を複数重ねる。彼女の動画は基本的にすべてこのロジックに基づいて設計されているといいます。

But-so構造

例えば、母親が外出中に家の壁に穴を開けてしまったので、「母が帰ってくるまでにバレないようになんとかする」というショート動画は、Tolanというバーチャルフレンドとの会話を通じて提案された解決策を試すという内容。

どれもこれもうまくいかず、母が帰宅するギリギリになって投じた策で何とか乗り切った、というオチになっていますが、あれこれ試す過程が「ストーリー+転換(But-So構造)」になっています。

壁に穴を開けてしまった → 隠そうとする(But) → 解決策を考える(So) → うまくいかない(But) → さらに工夫する(So)…といった具合に、展開に緩急をつけています。

(2)Bプロットで感情の奥行きを加える

もう一つ、ジェニーは主軸の物語(Aプロット)とは別に、感情に訴える家族との掛け合い(Bプロット)を差し込むという手法をよく使っています。これによって視聴者の注意を引きます。

コンフリクトがなくてすべてが順調だとつまらなくなり視聴維持率を維持できません。

そこでジェニーはゴールに辿り着くまでのコンフリクトを表現するために家族との掛け合いをうまく利用しています。

例えば彼女の代表作で4,500万回以上の再生を獲得している「ファストフードのハンバーガーと自作のハンバーガー、どちらが早い(ファスト)か?」を検証した動画。

母: 車の中が煙だらけよ!
ジェニー: まだ焼けてないよ。行列があってよかった。
母: 何してるの?この車を燃やすつもり!?
ジェニー: 焼いてる間にトマトを切るね。
母: それ、私が食べなくちゃいけないの?
ジェニー: もっとゆっくり車を走らせてよ!
母: たった1人の登録者のためにこんなことしてるの?もうめちゃくちゃになっちゃうわよ。
ジェニー: ケチャップをバンズに塗って。

これについてジェニーは以下のように話しています。

動画の中に乗り越えなければならない困難がないと、視聴者は興味を維持できない。それを主題の「どっちのバーガーが早くできるか」に加えて、この動画では母とのやりとりを「Bplot(副筋)」として使って、ハンバーガーが早くできるかと同じくらい母とのやりとりにも興味を持つようにしたんです。
The Secret to Telling a Great Story — in Less Than 60 Seconds | Jenny Hoyos | TED

(3)「デュアルナラティブ(二重ストーリー)」で感情を伝える

また、「デュアルナラティブ(二重ストーリー)」も使っている手法の一つ。これは、音声のナレーションと映像で異なる内容を同時に伝える手法。ナレーションでは淡々と事実を説明しつつ、映像では家族との感情的なやり取りや意外な背景情報をさりげなく映し込む、というのがジェニー流。

例えば、バレンタインに祖母にプレゼントを渡すショート動画では、最初に祖母にプレゼントをするべき「Valentainがいない(祖父がいない)」ことをナレーションで伝えています。

プレゼントを用意していく過程で祖父の写真を出し「今年が一人で過ごす初めてのバレンタインだから」とナレーションを添えています。「祖父が亡くなった」ので「代わりにプレゼントを渡す」ということは全くナレーションでは伝えていないですが、それを示唆するような表現になっています。

この手法により、視聴者は言葉だけではなく、映像からも「裏のストーリー」を感じ取ることができます。たった60秒の動画でも満足度を高くする一つの技ですね。

視聴者を惹きつける「ツイスト」を入れる

ジェニーの動画には必ず「ツイスト」=予想外の展開が入っています。たとえば、母の日に5ドルのプレゼントを贈った動画では、プレゼントを受け取った母親が喜ぶ…と思いきや、落として壊してしまうという展開。それでも「あなたは最高の娘よ」と伝える母のセリフがオチになる。このツイストがあることで、感動・驚き・共感が同時に起こり、視聴者は最後まで離れられなくなります。

  • フック:
    • 「私の母は母の日のギフトをもらったことがない。だからたった5ドルで最高のプレゼントをあげようと思う。」
  • フォアシャドウ:
    • 5ドルでギフトを贈り、母親を驚かせるという期待感を与える。
  • 期待された展開:
    • 母親にギフトを渡し、喜ぶ様子が映し出される。

ここまでが冒頭から始まる展開で、最後が視聴者の期待を裏切る「ツイスト」が入る。

  • ツイスト:
    • 母親がもらったギフトを落として壊してしまう。
    • しかし、その後で母親は「あなたは今までで最高の娘だ」と言う。(ジェニーは一人娘)

自分らしいツイストを加えて独自のスタイルを築くことは、数多いるYoutubeクリエイターの中で、レッドオーシャンでなくブルーオーシャンで戦うために重要なことだとジェニーは話します。

これは良いクリエイターの模倣だけでは作れるものではなく、自分の長所や独自性を俯瞰して自問自答することが必要だと。

アイドルに憧れたり、アーティストの真似をしたりするのは当然だけど、結局のところ、自分だけのユニークなものを持つべき。 あなた独自の長所は何ですか?あなたが長けていることは何ですか? あなたの今の状況で有利に働くことこそが、ブルーオーシャンで活躍するYoutuberになる秘訣だと思う。

実は「答えがふわっとしている」ほど盛り上がる

テンションを上げながら視聴者の期待を高めていき、最後の結末は「答えが不確かなほど、エンディングは盛り上がる」とジェニーは話しています。

ドライブスルーの動画では「焼けた!しかもドライブスルーより早くて上手くできた!」というオチをサクッと見せて終わり。ショート動画特有の、あっさりしていて明確かつ満足感のある「オチ」を彼女は大切にしています。

前段のフックやフォアシャドウが効いている状態で答えが不確かであればあるほど、結末はより満足のいくものになるんです。
この動画に関しては、実際は私が作ったハンバーガーは生焼けでした。ドライブスルーの方が早く終わりました。でも視聴者はそんなこと正直気にしていません。彼らが求めているのは結末で、この動画に対して満足がいく「オチ」を聞きたいということなんです。

あとがき

ジェニーの動画制作は、設計・リサーチ・検証の徹底ぶりがとにかくすごい。マーケティングを仕事にしている人での唸るレベルなのではないでしょうか?

普段、直感で作っているクリエイターほど、「なんでこの動画が当たったのか」「どうやって次を作ればいいのか」が曖昧になりがち。でもジェニーのように、手法を構造化し、検証と改善を繰り返すことで、再現性のある“ヒットの型”が生まれるんじゃないかなと思います。「偶然バズった」ではなく、「狙って伸ばす」へ。そのヒントが、ジェニーの制作スタイルには詰まっています。

ジェニーの映像制作について書ききれなかった内容をメンバーページで公開しておきますね。

  • ジェニーはアナリティクスで何を見るか
  • 最もバズる動画の長さは34秒
  • 1秒カットしただけで、リテンションが急伸する
  • アイデア探しーバズは「運」ではなく「設計」されている

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